『どうして私は病気になったのですか?』
トークコンサート終了後の質疑応答で「患者さんによく聞かれるのですが、どう返事をしたらよいでしょうか」という質問を受けました。私は「答えはない」という答えをどのように伝えればよいのか、ほんの少し悩みました。
そして思い出しました。
私も同じ質問をしたことを。
21歳でクローン病を発病してから「できないこと」が増えていきました。主治医の先生からは「がんばるな」と言われ、それに背くたびに(がんばるたびに)症状は悪化し、入退院を繰り返していました。それでも未来に目標がある間は、その目標に向けて退院できるように努力しました。そして夢も希望も失くす日がやってきます。その頃から「どうして私は・・・」と考えることが増えていきました。考えても考えても答えはみつかりませんでした。
あれから20年。
生きていてよかったと思えるくらい幸せになりました。小さい頃からの夢を再び追いかけて、良き理解者に支えられて、周りの人たちからも「本当によかったね」と声をかけてもらえるまでになりました。
それなのに。
2年前の春になる頃でした。
毎月お参りに行くお寺で、なかなかお会いすることのできないご住職と、陽だまりの中でゆっくりお話しできる機会に恵まれました。心まで温かくなるお話しを聞いているはずなのに、自分の心の奥底から込みあげてくるのです。こんなことを聞いても困らせるだけだ、とても無意味なことだ、答えのないことなのに・・。打ち消しても打ち消しても込みあげてきました。
『どうして私は病気になったのですか』
その言葉とともに、涙も溢れてきました。
つかえていたものがポンっととれたような感じでもありました。
充分に幸せなはずなのに
心の奥底にはまだ「不幸な私」がいるようです。
そしてわかりました。
この「不幸な私」とともに生きていかなくてはいけないということを。
病気と闘っているときの私がいるから、「今」があるのですから。
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「運命を受け入れなさい」
「困難を乗り越えたときに、人は大きくなり、深くもなる」
あの日、ご住職がかけてくださったお言葉です。
・・・・・
2014年1月18日
新潟県医療ソーシャルワーカー協会公開講座より。
エスペランサ:奥田良子
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esperanza-okuda (火曜日, 18 2月 2014 15:51)
このご質問は神経系疾患の患者さんが入院されている病院にお勤めの方からのものでした。私が「答えはない」と思ったのは、私のように乗り越えた先に「生きる」ことができる病と、そうでない病では、まったく違うと感じたからです。クローン病のように病と闘いながらも生きていかなくてはいけない病の場合は、病を理解し、生きる術を見つけることで希望も見えてきます。ですが、そうでない病との場合はどうでしょうか・・。聞いても仕方のないことだとわかっていても、誰かに聞いてほしい、答えてほしい、自分を支える理由がほしい、そんな気持ちが根底にあるような気がします。
あの日、込みあげてきた気持ちは、何重にも蓋をした心から出てきた、ずっと聞きたかったこと、ずっと答えのほしかったことなのかもしれません。
いいの (火曜日, 18 2月 2014 23:14)
奥田さん、こんばんは。
私も病気を抱える身です。奥田さんとは違う病気ですけど。
「どうして私は病気になったのか」、私も同じ思いを抱いていました。病気を恐れ、死を恐れ、病気のために多くの苦しみと哀しみを経験しました。
一方で、同じ病気を抱える仲間との交流を通じ、多くの友を得ることができました。そして今は、同じ病気の仲間を励まし、さらに、他の病気や困難に苦しむ人たちを励まし支えることが、私の生きがいになっています。また様々な困難に苦しむ人たちを支えようとしている、素晴らしい人たちにも出会うことができました。奥田さんもそのお一人です。
思えば、それは私の病気のおかげなのです。
「どうして私は病気になったのか」、それは私に生きる目的を与え、素晴らしい人たちと出会うためだと私は考えています。
奥田さんもそう思われませんか?
esperanza-okuda (木曜日, 20 2月 2014 00:19)
いいのさん、優しいメッセージをありがとうございます。
コンサートの中で時々話すのですが
病気になった頃、『病気にならなければ私はどれだけ幸せになれただろう』とずっと考えていました。でも、今、とても幸せで『病気にならなければこんなに幸せになれたかしら?』と思うようになりました。
この変化は決して強がりではありません。
本当に毎日が幸せなんです。
まわりの人に支えられて、夢を追いかけることができる幸せ。
この幸せは、いいのさんが最後に書いてくださっていたとおりのことなんですね。
私もようやく運命を受け入れることができたようです。
生きていることに、生きられていることに、深く深く感謝です。
千穂 (金曜日, 21 2月 2014 11:39)
病気と向き合いながらでも生きていける、命があるということは本当に有難いことなんだと思います。
今回、再再発して落ち込んでばかり「どうして私ばかり…」と言う気持ちは拭えませんでした。
前回までは早く何とか薬と縁が切れるように、病院と縁が切れるように…とそればかりを考えていたけれど、この年になって病気とも10年以上の付き合いになった今「先生、薬飲んでても元気で当たり前に生活できることの方がいいです。」って言えるようになりました。
結局は【今できることをやる】しかないんですよね。
良子さんと出会えたことに私こそ感謝しています。
esperanza-okuda (月曜日, 24 2月 2014 23:19)
「生きていける」
このことに可能性を感じなくてはいけませんよね。
しんどい時にはなかなかそうは思えませんが・・。
自分自身の生まれ持つプラスのエネルギーを信じることが大切だと思います。どうしてもマイナスのエネルギーの方が強くて、引っ張っていかれそうですが、ちゃんと自分の中にはプラスのエネルギーもあるんです。私が弱弱しい一歩を踏み出したときに教えてもらった言葉は「自分にはできる」でした。それを呪文のように唱えなさいと言われました。今でも不安になるときはこの言葉をぶつぶつ言ってます。
負けないで。