「あの時はごめんね」
そう言ったのは大学の同級生。
楽器店の人に連れられてライブを聞きに来てくれました。
卒業以来だったことと、当時(数年前)は大学時代の友人と交流もなく、私自身、夢と希望に溢れた日常からどん底に落ちていくあの日々のこと思い出さないようにしていたので、かなり動揺していました。その上に突然謝られたのです。何のことだかさっぱりわかりません。
首をかしげる私に続けて言いました。
「退院して大学に出てきたとき、僕は君に『病気なんて気のもんや』って言ったら、突然泣き出したよね。あの時、どうして泣くのかもわからなくて、どうしたらいいかもわからなくて、そのままになってしまっててごめん。あの後、僕が思っている以上に大変な病気だと知ったんだ。心ないことを言ってごめんね」
思い出しました。
はじめての入院で、不安で、それも大学卒業年次で出席日数がぎりぎりで、まだ5月なのに卒業まで一日も休めない状況で、気持ちがいっぱいいっぱいだったときのことでした。誰にもぶつけることのできなかった気持ちが涙になっていきました。
励ますつもりで言ってくれたんでしょうね。
今ならわかります。
私の方こそごめんなさい。
こんなに長い間、気にかけてくれてありがとう。
この日、私は心に決めました。
過去を取り戻そうと。
自分の生きてきた時間を取り戻そうと。
昔の夢も、辛かった思い出も。
どんな時もそこには頑張っている自分がいるのですから。
私の最後の社会復帰がはじまりました。
FaceBookを始めました。
登録するとすぐに、知っている人がパソコンの画面に出てきます。
怖くて怖くて何度もやめようと思いました。
でも、昔の友人を取り戻さなくては自分の過去は戻ってきません。
怖い怖いと思いながら一ヶ月、半年・・。
数年経った今では何人もの友人と再会することができました。
あとひとり。
どうしても会わなくてはいけない友人がいます。
とても大切だった友人です。
でも、まだ会えない自分がいます。
この壁はいつか乗り越えられるでしょうか。
そして私は言えるでしょうか。
「あの時はごめんね」と。
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