講演会に行くと、たまに「質疑応答」という時間があります。難しいことを聞かれたらどうしようとドキドキしているのですが、10回に8回は「夫と私の馴れ初め」を尋ねられます(笑)。
話せば長い、ふたりの馴れ初め。
最初の出逢いは私が24~25歳くらいのこと。
21歳の時にクローン病を発病してからは、入退院の繰り返しでした。「がんばりたい」と思ってもなかなかうまくいかない・・それでも「病気になんか負けるもんか」と必死で頑張っていた頃です。
当時の私は、予定されていたフランス留学にドクターストップがかかり、海外がだめなら日本で頑張るしかないと、細い細いつてをたどって演奏の機会をもらっていました。そしてバブルがはじけるちょっと前、女性フルート奏者のプロのアンサンブルを結成する(当時日本初)とのことで、私にもお声がかかりました。願ってもないチャンスです。大先輩たちとともに活躍する機会がやってきたのです。
体調は悪いけれど、楽しくてたまらない。熱が出ても、腹痛があっても、ぜったいにステージに穴はあけない!と心に決めての参加でした。入退院もしていたけれど、メンバー皆さんに守られて頑張ることができました。
それは「フルートアンサンブルエリオ」というグループで、みんなが金のフルートを持ち、ピッコロやアルトフルート、バスフルートまで金色をした、ゴールデンバンドでした。
ステージではポップスからクラシック、ジャズまで演奏します。衣装はボディコンのミニスカートでしたし、私たちメンバーの後ろでは、ジャズやポップスの世界の大御所ミュージシャンのピアノトリオがサポートしてくれていました。なにもかも、それまでのクラシックのフルートのイメージを覆すものでした。活躍の場も多く、全国各地でコンサートをさせていただきました。
そんなエリオが「フルートコンベンション」という全国からフルート奏者が集まってくる催しのオープニングコンサートに抜擢されたのです。こんな大チャンスはありません。体調の悪さなんかどこかへ飛んでいってしまいました。
しかし、本番のひと月前、私は入院してしまったのです。
絶食2か月と言われました。
本番のステージに立てないかもしれない。
せっかくの大チャンスなのに。
24時間持続の点滴に繋がれている入院生活です。
この点滴がある限り、どうしようもありません。
途中、練習もあるし、リハーサルもあります。
どうしようと悩んでも、どうしようもありません。
私の代わりなんて、たくさんいるのですから。
と、思っていたら、エリオを統括している先生が「なんとかコンサートに出れないか?」と言いにきてくれました。こんな嬉しいことはありません。なんとかならないか、なんとかならないか・・そう思っているうちに、主治医の先生に「なんとかならない?」と聞いていました。
最初は難しい顔をしていた主治医の先生も、毎日毎日「コンサートに出たい」と言い続ける私に最後は根負けです。
『一時的に点滴を止めよう』
今でこそ、あたりまえのように点滴を止めて外出したりしていますが、当時はそんなにポピュラーではありませんでした。ヘパリンというお薬を流しいれ、血液が固まらないように、そして逆流しないようにして、点滴の長いループをからだにぐるぐると巻きつけてテープで固定し、雑菌が入らないようにガーゼで要所要所を包みました。
そして、主治医の先生からは「外では何も食べないように。できれば何も飲まないように。どうしてもの時は水を少し舐めるくらい。そしてできるだけ早く病院に戻ってきてくれ」と言われました。
なかなか大変です。
ひと月近く絶食しているのですから、ふわふわふわふわします。
それでも外に出れるのが嬉しくて。
練習に行けるのが嬉しくて。
母親にお気に入りのワンピースを持ってきてもらい、ちゃんとお化粧して、病院から練習会場の「サントノーレ」というお店に向かいました。
そこで、私たちは出逢いました。
長くなったので・・「夫との出逢いその2」につづく。
・・・・・
奇跡のステージまでの道のり。
今日もフェイスブックのお友だちにリサイタルの告知とお願いメッセージを送りました。応援してくれるお返事にとっても癒されています。ありがとうございます。
では、8月2日の13時半に芦屋ルナホールでお会いしましょう。
開演は14時ですよ。
お待ちしています。
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